感謝習慣を「既存の習慣」と組み合わせる:続けやすい「習慣スタッキング」の始め方
感謝習慣を「既存の習慣」と組み合わせる:続けやすい「習慣スタッキング」の始め方
感謝の習慣を生活に取り入れたいと考えつつも、日々の忙しさの中で忘れてしまったり、他の優先事項に追われて後回しになったりすることは珍しくありません。感謝の習慣を始めようと意気込んでも、数日で挫折してしまった経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。習慣化は多くの人にとって課題であり、特に目に見える成果がすぐに現れにくい感謝のような習慣は、継続のモチベーションを保つのが難しいと感じられることもあります。
この記事では、感謝の習慣を無理なく生活に溶け込ませ、継続するための具体的かつ体系的な方法の一つとして、「習慣スタッキング」というアプローチをご紹介します。すでに確立された習慣に新しい習慣を紐付けるこの方法は、感謝習慣の継続にどのように役立つのか、そしてどのように実践すれば良いのかを詳しく解説します。この記事を読むことで、感謝習慣を継続するための実践的なヒントと、モチベーションを維持・回復させる具体的な工夫を得られることでしょう。
習慣スタッキングで感謝習慣を継続する
習慣スタッキングとは、すでに定着している習慣の直後に、新しく身につけたい習慣を行うという手法です。これは、ジェームズ・クリアー氏の著書「Atomic Habits(邦題:ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣)」などで広く知られるようになりました。習慣スタッキングの基本的な公式は「[現在の習慣]の直後に、[新しい習慣]を行う」というシンプルなものです。
感謝習慣を習慣スタッキングで実践する場合、例えば「朝食を食べる」という既存の習慣があるなら、「朝食を食べ終わったら、今日感謝できることを一つ考える」というように設定します。「歯磨きをする」習慣があるなら、「歯磨きが終わったら、口の中の健康に感謝する」ということも可能です。通勤中であれば、「最寄りの駅に着いたら、安全に移動できる環境に感謝する」といった形も考えられます。
このアプローチが感謝習慣の継続に有効な理由はいくつかあります。まず、すでに強固なトリガー(現在の習慣の終了)が存在するため、「いつ新しい習慣を行うか」を迷う必要がなくなります。これにより、行動への抵抗感が減少し、新しい習慣を開始するハードルが大幅に下がります。また、既存の習慣化された行動の「流れ」に乗ることで、感謝という新しい行動も自然と組み込まれやすくなります。これは、心理学における「自動性」や「習慣ループ(トリガー→行動→報酬)」の考え方とも関連しており、トリガーがあれば無意識的に行動へ移りやすくなる効果が期待できます。
実践ステップと継続のための工夫
習慣スタッキングを用いて感謝習慣を始めるための具体的なステップと、それを継続するための工夫をご紹介します。
- 「現在の習慣」を選ぶ: まず、あなたが毎日(あるいは高頻度で)確実に行っている習慣をリストアップします。朝起きてすぐのこと、食事関連、身支度、通勤・通学、寝る前の行動など、ルーティンになっているものが適しています。
- 「新しい習慣:感謝」を具体的に設定する: どのような感謝の行動を、どのくらいの時間、どのくらいの頻度で行うかを具体的に決めます。「感謝日記をつける」ではなく、「感謝できることを一つだけ思い浮かべる」のように、最初のハードルは極めて低く設定することが重要です。
- 「スタッキングの公式」を作る: 選んだ「現在の習慣」と設定した「新しい習慣:感謝」を組み合わせて、「[現在の習慣]の直後に、[新しい習慣:感謝]を行う」という明確な公式を作成します。例えば、「夜、風呂から上がったら、今日良かったこと、感謝できることを一つだけ言葉にする」。
- 実践し、記録する(推奨): 作成した公式に従って、設定した習慣スタッキングを毎日実行します。可能であれば、実行できたかどうかを簡単なチェックリストやアプリで記録すると、達成感を得やすく、継続のモチベーションにつながります。記録自体を「感謝行動の直後に行う」ようにスタッキングすることも有効です。
継続のための工夫としては、以下のような点が挙げられます。
- トリガーの質を意識する: 毎日確実に起こり、かつ完了が明確な習慣をトリガーに選びましょう。完了が曖昧なもの(例:「考え事を終えたら」)は適しません。
- 「新しい習慣:感謝」を極限まで小さくする: 始めるのが億劫にならないよう、感謝行動の負荷を最小限にします。「5分間感謝について考える」ではなく、「10秒間感謝できることを思い浮かべる」から始めます。
- 複数のスタッキングを試す: 一つのスタッキングが難しければ、別のトリガーで試してみます。朝、昼、夜、あるいは特定の場所や状況など、複数のタイミングで小さな感謝行動をスタッキングしても良いでしょう。
- 成果を「見える化」する工夫: 感謝の内容を短い言葉や単語でメモするだけでも、後で見返した時に「自分は毎日感謝できている」という実感やポジティブな感情を得られます。これは自己効力感(「自分にはできる」という感覚)を高め、モチベーション維持に繋がります。
- 柔軟性を持たせる: もし設定したスタッキングがうまくいかなかった日があっても、自分を責めず、翌日から再開します。「完璧主義」を手放すことが継続には不可欠です。
習慣スタッキングは、感謝習慣を特定の時間や場所と強く結びつけることで、忘れにくく、実行しやすい状態を作り出します。これは、リマインダーアプリのように外部からの通知に頼るのではなく、すでに内蔵されている「既存習慣」という強力なトリガーを利用する仕組みと言えます。
関連するアプローチとツール
感謝習慣を習慣スタッキングと組み合わせる際に役立つ、関連する他の自己改善アプローチやツールについても触れておきましょう。
- 目標設定: なぜ感謝習慣を続けたいのか、続けることでどのような状態を目指したいのかを明確にすることで、習慣スタッキングを行うこと自体の意義が増し、継続への内発的な動機付けになります。
- 記録・ジャーナリングツール: スマートフォンのメモアプリ、専用の感謝ジャーナル、習慣追跡アプリなど、様々なツールが感謝した内容や習慣の実行記録をサポートしてくれます。これらのツールを活用することで、感謝習慣の実行がさらに容易になったり、後からの振り返りによって効果を実感しやすくなったりします。記録する行動自体をスタッキングの一部に組み込むこともできます。
- 内省: 感謝習慣は、自分自身や周囲との関係性、日々の出来事に対する内省を深める良い機会となります。スタッキングによって感謝の時間を確保することで、単なる形式的な行動に終わらず、より意味のある習慣へと発展させることができます。
感謝習慣は、他のメンタルヘルスケア習慣(例:瞑想、軽い運動、十分な睡眠)とも相乗効果を発揮することが知られています。習慣スタッキングは、これらの習慣全体を無理なく生活に組み込むための有効な手段となり得ます。重要なのは、大きな変化を一度に求めず、小さな一歩から始め、それを日々のルーティンに少しずつ組み込んでいくことです。
結論
感謝の習慣を継続することは、多くの人にとって挑戦です。しかし、この記事でご紹介した「習慣スタッキング」は、すでに確立されている既存の習慣を足がかりに、感謝という新しい習慣を無理なく生活に根付かせるための強力な手法となります。
「[現在の習慣]の直後に、[新しい習慣:感謝]を行う」というシンプルな公式を用い、感謝行動を極限まで小さく設定し、日々実践することで、感謝習慣は日々のルーティンの一部となっていきます。記録による「見える化」や、柔軟性を持った取り組みを心がけることも、継続の大きな助けとなるでしょう。
感謝習慣が無理なく生活に溶け込み、継続することで、心の平穏や幸福感の向上、人間関係の改善など、様々なポジティブな変化がもたらされる可能性があります。まずは、今日から一つだけ、あなたが確実に毎日行っている習慣を選び、その直後に感謝できることを一つ思い浮かべる、という小さな習慣スタッキングから試してみてはいかがでしょうか。